ぱーるの日記

書評を載せると思います。

『和解』に向けて―書評【志賀直哉『城の崎にて』】―

『和解』は志賀と父親との不仲を解消するまでを描いた傑作です。本書はそこに至るまでの志賀の微妙な気持ちを描いていると解釈しています。微妙とは、生死に感じやすい気持ちと調和的な気持ちのはざまにいるという意味です。個人的に『和解』は凄く好きな作…

良い文章は、「心」からはじまる。―書評【辰濃和男『文章の書き方』】―

www.amazon.co.jp ①とにかくたくさん見て聞いて読め ②読み手の側に立て ひっじょ~に大まかに言えば、辰濃の主張はこの2点です。 姉妹本である『文章のみがき方』も同様の主張です。 --------------------------------------------------------------------…

アタリマエを打ち破れ!―書評【ミシェル・フーコー『監獄の誕生』】―

www.amazon.co.jp 簡単に言えば、「死刑=残酷」「監禁刑=残酷ではない」という図式を打ち破ろうとしたのが、本書です。 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 「溶か…

「普通の人間」が小説家として書き続けるために ―書評【村上春樹『職業としての小説家』】―

www.amazon.co.jp 本書は、紀伊国屋書店が初版10万部の9割を買い占めたことで話題となりました。ですが、そうしたいわゆる「今売れてます!」で消費される本ではないと思います。 「ごく普通の人間」であっても、「最も重要な日本の現代作家」と評されるほど…

丸山の極点―書評【丸山 眞男「歴史意識の『古層』」】―

www.amazon.co.jp 丸山後期の「古層」論は、3つの部分に分かれています。 1972年「歴史意識」、1976年「倫理意識」、1988年「政治意識」の3つです。 これらにおいて、「歴史意識」の「つぎ」の論理が、「倫理意識」「政治意識」の基礎論理の前提となってい…